第06回

前書き

ここでは、ただ単に可愛かったりして連呼される「萌え」
つまり、僕の定義するところの広義の「モエ」ではなく
狭義的な「萌え」ということについて考察します。
詳しいことは後述するので
ここでは「モエ」と「萌え」は違う
そのことが分かってもらえればよいです。

萌えとは何か

萌えというのは愛情表現の一種だと思います。
それはただ単に可愛いと思うだけであったり、
好きだという、愛情を覚えたりする、
ちょっとした擬似恋愛とでもいうのでしょうか。
そしてそれらは決して性的興奮ではなく、
「燃え」とは全く違うものであると思います。
「燃え」というのは興奮する時に主に用いられます。
なので性的興奮を指す時には「燃える」で、
性的に興奮を覚えないときに「萌える」を指すのだと思います。
AV等では「萌える」より「燃える」方がしっくりくる気がするのは
このためかと思います。
ただ、AVの場合はコスプレなどもあり
ライン引きは非常に難しく、僕の考えがまとまっていません。
その点に関しては矛盾等あるかもしれませんが、
ご了承ください。

何に萌えているのか

萌えるという行為は主に、アニメや漫画、
その他にはゲームのキャラ等に使われます。
これらは全て二次元的なものです。
そしてアイドル等の、
極一部の三次元的なものにも萌えられます。
これらにいえる共通点というのは、
作られたキャラ性であるということです。
アニメキャラに関して言えば、それらは全てフィクションであり
すべて製作者の手によって作られたものです。
それらは外見、性格などの設定が全て作り物であり、
本来ならば内面を表すキャラ性というのは、
アニメなどに関して言えば、全てがキャラ性といえます。

アイドルですが、アイドルというのは全て人間です。
しかし、それらは全てが本当に当人のキャラといえるでしょうか。
アイドルに関わらず芸能人というのは全てが人間というより、
キャラクタであるといえます。
ありがちなのがコメディアンの性格です。
テレビ上ではとても面白い彼らですが、
テレビの裏に回ればその性格はとても違う人が多いそうです。
(99の岡村が有名でしょうか)
同じようにアイドル達も、あの性格通りとは思えません。
彼女達は大概が、どこかボケており、料理もあまりできず、
彼氏などは絶対にいないという共通点があります。
もちろん全部のアイドルが、とはいいませんが。
これらのことを考えると、アイドルのキャラクタというのも
作り物であり、二次元的なものと同じキャラ性だと思います。

これらを裏付けることとして「擬人化」というものがいえると思います。
掲示板群で有名な「ふたば☆ちゃんねる *1
ここではアニメや漫画のキャラではないただのものが
多数の人たちにより、性格を与えられ萌えられています。
ハバネロたん*2
http://barrageshot.hp.infoseek.co.jp/habaTOP.htm
OSたん*3
http://nijiura-os.hp.infoseek.co.jp/
煙草*4
http://www.ctb.ne.jp/~silver-s/
などなど、一見萌えとは関係なさそうなものが
キャラ性(外見的なもの含む)を与えられ、
様々な人たちに萌えられているのです。

このためにAVなどに対して燃えるというのは適切ではないと思うのです。
もちろん、AVでもセーラー服やナースなどコスプレが存在しますが、
そこには教師と生徒や看護士と患者という
シチュエーションが存在します。
しかし、これらは全て性的対象であり、
キャラ性としてはみなすことはできません。
そもそもAVのキャラ作りというのは
棒読みだらけでキャラと呼べるかすら怪しいですし。
このため、AVにおいては外面的には広義的な「モエ」でありますが、
本質においては性的興奮の「燃え」だと思います。*5
18禁ゲームに関して言えば
キャラ性が高いので「萌え」でしょう。

このように様々な「萌え」というものが存在しますが、
お菓子のハバネロを一袋買ってきて、
ハバネロたん萌え」などという人はいないでしょう。
萌えるという行為に対してキャラ性というのはとても重要なのです。
むしろ、人というのはキャラ性に対して萌えるといえるでしょう。


補足
全てが「作られたキャラ性」に萌えるとは限りません。
ちょっとした仕草に萌える場合もあるでしょう。
それらは「作られたキャラ性」ではなく、
「キャラ性」に萌えているのです。
アイドル達の全部が全部作られたキャラ性ではないでしょうし、
時のは素の自分を出してしまう時もあるでしょう。
そして時にはちょっとした仕草に萌えたりもするでしょう。
これらは全て、「キャラ性」に対してであるといえます。

萌えの距離

萌えるものに対しての共通点というのは、
自分との距離だと思います。
アニメや漫画のキャラというのは
決して触れることは敵いません。
自分との距離はとても遠いものであるといえます。
萌えキャラ化されたモノたち(OSたん等)も同様です。
アイドルに関しても、自分との距離とは遠く、
ブラウン管の向こう側であったりすることが殆どです。
身近な人に面と向かって「萌え」とか言う人などいないでしょう。
自分の手の届かないものだからこそ萌えるのです。
そのために擬人化やアニメ、漫画などの
フィクション性の高いものの割合が多いといえます。

なぜ萌えるのか

フィクション性の高いことと距離感というものを考えると
一種の逃避行動ととることが出来ると思います。
一般的な人は殆ど「萌える」ことはなく、
オタクっぽい友達等に冗談で使う程度であり、
そういった人は「モエ」であり、「萌え」ではありません。
萌えるという行為をするのは大概が、
アニメや漫画、アイドルなどのオタクです。
とりあえず「モエ」と言っていればいいような
消費的なものではなく、
そのキャラ性を愛した「萌える」
という行為をするのはオタクなのです。

オタクというのは大概がコミュニケーションが得意でなく、
自分という殻に篭もりがちであるといえます。
そのためのはけ口として、
フィクション性の高いものを求めるのではないでしょうか。
ときメモ」などに代表される恋愛ゲームが人気なのは、
フィクション性に学校などの日常生活内で擬似恋愛をするという
ノンフィクション性を取り入れたからでしょう。
その中では自分はとても理想的な人間であり、
(萌える)対象も理想的で、更にはシチュエーションも理想的です。
これらはゲーム内のことですから。
だからすんなりと萌えることができるのです。

萌える対象というものは距離が遠いものです。
そのために、萌える行為の殆どは自分の想像力に任せられます。
対象は(その想像内で)
自分の友人であったり、恋人であったり、妻であるかも知れません。
その萌えるという行為において想像内では全てが思うが侭です。
上記したゲームと同じように何から何までもが理想的なのです。

つまり、コミュニケーションが不得意なために
自分である対象を見つけたときに、
理想的な環境を自分で創り上げるのです。
このことから萌えるという行為は
ある種の逃避行動と捕らえることが出来ます。

記号化される萌え

萌えというのはだんだん記号化されていく傾向にあります。
妹萌えであったり、メイド萌えやメガネ萌えであったりします。
それらは一種のフェティシズムであり、
一般的なキャラ性に萌えるのではなく、、
さらに狭い、キャラ性に萌えているのです。
これらは「属性」と呼ばれ、萌えは記号化されていくのです。
そしてこれらの「属性」は時には複合し、
メガネをしたメイドというものも生まれます。
こうして萌えは更なる記号化をなされているのです。

萌えの共有

こうして記号化されていった「萌え」も、
同じ「属性」を持つ人がいることでしょう。
そうしてオタク達は同じ「属性」を共有することにより、
さらなる「萌え」へと発展していくのです。

これは「ふたば」がいい例ではないでしょうか。
ここでは不特定多数のオタクの手によって、
キャラ性を持たされたキャラが同じ属性を持った者たちによって
育てられてゆき、新たなキャラが生まれていったり、
新しいキャラ性を与えられたりします。

「萌え」というのはオタク達と密接に関係しているために
このようなことになるのだと思います。
「萌え」というのは現代のオタク文化の根底に位置し、
その「萌え」を共有するのが最近のオタク文化の風潮だといえます。

消費される萌え

しかしながら、「萌え」というのは新しい言葉です。
「萌え」という言葉自体の誕生は古くとも、(恐らく10年ほど前でしょう)
認識され始めたのは数年ほど前からです。
そのために今だ「萌え」は定義されておらず、
単純に「萌え」を連呼し、
消費される「モエ」というものが多いのです。
これらの「モエ」は、にただ単に可愛いだとか
ちょっと気に入った程度のものであり、
「萌え」ほど心に響かないものであると思います。
これらの「モエ」は「可愛い」など意味の広義の萌えで、
多用されすぎたために定着してしまった意味です。
「萌え」の本質は
キャラ性を愛するという行為であると言えるでしょう。
AV等、性的欲求を覚えるものに対しても「モエ」で、
本質とはかけ離れていると思います。

萌えを定義する

以上のことを踏まえた上で、
僕は萌えというものを定義したいと思います。

もえ 【萌え】

(1)見た目を可愛いと思うこと。
	「このキャラの外見は―・る」
(2)キャラ性に擬似的恋愛感情を覚えること。一種の愛情表現。
	「このキャラに―・る」

本来なら(1)は「モエ」と書きたいところですが
既に認識されすぎているので新しく提唱しても無理でしょう。
しかし、「萌え」の本質は(2)なのです。

*1:http://www.2chan.net/

*2:スナック菓子、暴君ハバネロを擬人化

*3:OSのWindowsを擬人化

*4:タバコの銘柄を擬人化

*5:「モエ」と「燃え」が同時に存在するためにライン引きが若干難しいものになっています。